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2012年1月 4日 (水)

子供と離れて暮らす母親へのアンケート 集計結果  

以前、こちらのブログでもご協力をお願いしました「女性当事者」アンケートの結果を、公開します。
大変遅くなりましたが、ご協力頂いた皆様にお礼申し上げます。


今回のアンケートからは、以下のようなことが浮かび上がってきました。

1.「離別にあたりどのような事情があっても、親権は9割方は女性にいく」という社会的通念があり、何らかの事情で子供と離れて暮らす母親に対しては「母親なのに子供を引き取っていないとは、何か余程のことをしたに違いない」と見なされる場面が少なからずあること。

2.離別後の面会交流の取り決めをしても、相手方の意向や、再婚などの事情でそれが守られない実情が多いこと。また、子供が母親との面会を拒否している場合も見受けられるが、それが子供の本心かどうかは確認できない場合があること。

3.母親が親権をとって子供を養育したり、継続的な面会交流を望んだりしたとしても、父親側が強引な引き離しをしたり、関わった相談機関や弁護士、裁判所などが母子の交流を推奨しない旨のアドバイスや決定をしたりすることがあり、結果的に母子が引き離される事があるということ。

4.離別後、養育費を払う母親が少ないこと。その理由としては、一人で自活する母親が経済的に苦しい状況にあること、慰謝料と相殺するなどの離婚時の金銭的な取り決めによるものがあること、払ったとしても父親が使いこんだりすることがあり、子供の為に役立ててもらえないから支払いをやめるということが浮かび上がってきた。

5.子供の通う学校などへの連絡や行事などの参加については、個々の事情により様々であること。特に学校では、離別した母子の交流に理解のあるところもあるが、監護親の意向により情報を開示しなかったり、母親との連絡や行事の参加を拒否したりするパターンもあること。運動会の観覧が多いこと。

6.相手方のDVや暴言が心の傷となって残っていたり、子供の生活に何らかの悪影響を及ぼしかねないという理由などで、学校や子供に連絡をとることを控えているという意見があったこと。

一旦子供と引き離されると、たとえ母親であっても定期的に子供と会い続けたりすることは難しくなるという現状があります。1以外は男性当事者と同様の傾向があるのではないでしょうか。

アンケートでは離別時の状況なども含めた質問をしましたが、今回は母子の関係に関する項目をまとめました。
質問項目や個別回答につきましては、以下のページのリンク先をご覧ください。

子供と離れて暮らす母親へのアンケート 集計結果

2011年9月30日 (金)

自転車で旅をしながら「共同親権」を訴える男性についての記事。

神戸新聞 2011年9月30日(金)『人』

共同親権を全国で訴える英会話学校講師

ケビン・ブラウンさん

 離婚後の子どもの親権について、欧米の多くが両親の共同親権を採る中、日本は片方の親にのみ限定する単独親権を採用する。
 「親権を持たないと子どもから切り離され、その人生にほとんど関われない」。自転車で熊本をたち、列島各地で日本の制度の弊害を訴える。28日には兵庫県庁を訪ね、知事宛ての手紙を渡した。
 米イリノイ州出身。米国に留学中の日本人女性と知り合い、2002年に来日し結婚、長男を授かった。子育てをめぐるすれ違いから4年前、妻が子どもを連れて家を出た。育ち盛りの長男に会えるのは6週間おきで、わずか5時間。「親権を奪われ、詳しい住所も知らされず、子どもと満足に会えないなんてこの国の制度はおかしすぎる」と訴える。
 親権を失うと、わが子との面会を保障するものはない。当事者の多くは「熱を出した」「会いたくないと言っている」などの理由で面会を拒まれた経験を持つという。
 「子どもの権利条約」には、離婚後も子どもは定期的に親と会う権利を持つことが明記されている。日本でも、国際結婚の破綻後に子どもを無断で国外に連れ去ることを防ぐハーグ条約の批准に向け、単独親権を問い直す動きもある。
 「面会の権利を詳細に定めない日本の法律はあまりに漠然としている。子どもと会えなくなり、それを苦に命を絶った人もいる」。支援者と交流しながら、ゴールの東京を目指す旅は10月中旬まで続く。愛知県岡崎市在住。英会話学校で講師を務める。45歳。  (黒川裕生)

2011年9月28日 (水)

NHK「もしも明日…」色々なツイートを、まとめました。

先日放送されたNHK「もしも明日…」に関して、ツイッターよりつぶやきをまとめてみました。
なるべく多くの立場の方の意見を網羅したかったので、量が多くなりました。

9月3日放送「離婚の危機を迎えたら」
http://togetter.com/li/184118

9月24日放送「わが子に虐待を始めたら」
http://togetter.com/li/192934

どちらもツイートの多さから、世間の関心の高さがうかがえました。
私が取材に協力した「離婚の危機を迎えたら」は、夫に子どもを連れ去られた女性が主人公でした。
そして「わが子に虐待を始めたら」は、夫と別れ、一人で育児をする女性が主人公でした。

今も世間で起きている、悲惨な幼児虐待事件。
一人親家庭でも多く起こっていることを考えると、別居親は面会交流をきちんとする義務があるのではないでしょうか。
番組中で「虐待をしてしまっている親の傍に、おせっかいを焼いてくれる人が必要」とも言われていました。
その「おせっかい屋さん」は他人ではなく、もう一人の実の親でも良いのではないでしょうか?

そろそろ、虐待の防止と、別居親との頻繁な面会交流の制度化、子どもが成長するまでは両親共に責任を持つという共同養育が、関連付けて論じられるべきではないでしょうか?

2011年9月 1日 (木)

NHK総合「もしも明日…」第1回「離婚の危機を迎えたら」 (9月3日)

久しぶりの更新となります。
このたび、何人かの「子どもと離れて暮らす母親」の皆様の取材を基にした番組が放送されることになりました。
私も取材を受け、色々と辛い現状をお話させていただきました。

これまで、「離婚や別居で子どもに会えない親」といえば、たとえば男性であったり、DV加害者であったりするイメージがありましたが、今回はそうではなく、母親が子どもと引き離されるケースが取り上げられるようです。
放送を楽しみにしたいと思います。


NHK 9月3日 土曜日 午後 10:00~11:13 (全国放送)

仕事に注力するあまり、家庭がおろそかになってしまった妻が、5日間の出張から家に帰ると、夫と子どもがいなくなり、離婚届が置いてあった、というエピソードから始まる。弁護士を交えて5歳になる子どもの親権を争い、夫の母親も巻き込んでいく……という物語。
有働アナが司会を務めるスタジオトークのゲストには、離婚歴のある作家の室井佑月さん(41)、俳優の石田純一さん(57)、六角精児さん(49)が出演し、自身の離婚経験や、その経験に基づいた考えなどをトークする。また女性弁護士なども出演し、親権問題などについて解説する。

【ゲスト】石田純一、室井佑月、坂下千里子、六角精児
【出演】中江有里、高野志穂、田中幸太朗、かとうかず子

http://news.nicovideo.jp/watch/nw105231

http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/story.html?q=cinematoday_N0034830&__from=mixi

2010年8月10日 (火)

「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」に関するパブリックコメント募集中

相次ぐ児童虐待の問題に関し、法務省がパブリックコメントを募集しています。
虐待行為に対する親権の制限のあり方が検討されているようですが、離婚後の単独親権制度に起因する問題でもあるでしょうし、定期的な面会交流が義務付けられていれば防止できたことかもしれません。
現行制度に疑問を持たれる方は、その視点からも意見を送ってみてはいかがでしょうか。
以下、募集要項です。

「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」に関する意見募集

法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会では,児童虐待の防止等を図り,児童の権利利益を擁護する観点から,民法の親権に関する規定を見直すことについて審議を行ってきましたが,この度,これまでの審議の結果を中間試案として取りまとめました。
そこで,法務省民事局参事官室では,この中間試案を公表して,広く皆様の御意見を伺うことといたしました。また,中間試案の公表に際し,その補足説明も作成しましたので,併せて御参照ください。
今後は,法制審議会において,寄せられた御意見を踏まえて審議を行い,法律案要綱を決定する予定です。
なお,いただきました御意見につきましては,当参事官室において取りまとめた上,今後の法制審議会の審議の参考にさせていただきますが,提出された方の氏名(法人その他の団体においては,名称),御意見の内容等を公開する可能性があること及び個々の御意見に直接回答することはないことをあらかじめ御了承願います。

意見募集要領
1 意見募集期間
平成22年8月6日(金)~平成22年9月10日(金)
2 意見送付要領
住所(市区町村までで結構です。),氏名,年齢,性別及び職業を記入の上(差し支えがあれば,一部の記載を省略しても構いません。),電子メール,郵送又はファックスにより,日本語にて意見募集期間の最終日必着で送付して下さい。
なお,電話による御意見には対応することができません。
3 あて先
法務省民事局参事官室
・郵送:〒100-8977
東京都千代田区霞が関1-1-1
・FAX:03-3592-7039
・電子メール:minji16@moj.go.jp
4 問い合わせ先
法務省民事局参事官室
TEL:03-3580-4111(内線2463)

詳細は下記のリンクをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900033.html

2010年6月 3日 (木)

関西圏にてドキュメントが放送されます!

首都圏ではしばしば「親子引き離し問題」に関するドキュメントが放送されているようですが、関西でもついに取材が入り、放送されることになりました!



下記日程で
『単独親権を取り巻く問題と立ち上がる共同親権運動』趣旨の
ドキュメントが14分枠で放送されます。

・取材局 :朝日放送(ABC:テレビ朝日系列)(放送エリアは近畿圏)
・番組名 :「NEWSゆう+」
・放送予定:6月8日(火)、午後4時50分~6時50分の間で14分枠
・ドキュメント構成(順不同)
    ・大阪駅前街頭活動(外国人、女性当事者へのインタビュー)
    ・活動会議の様子
     (参加者:川本弁護士、コリン教授、関衆議院議員、(社)親子の絆ガーディアン
          名古屋地区外国人当事者、女性当事者、男性当事者、計13名)
    ・女性当事者への密着取材(引離し被害者の置かれる現実)
    ・川本弁護士へのインタビュー
    ・コリン教授へのインタビュー
    ・棚瀬一代教授へのインタビュー

以上で14分間の放送となります。

2010年5月27日 (木)

「親子引き離し問題」に関する動向。そして、情報。

近頃、共同親権への法改正やハーグ条約への批准など、マスコミで「親子引き離し問題」に関する話題が取り上げられることが増えてきました。
大手新聞での特集や報道番組はもちろんのこと、女性ファッション誌のインタビューコーナーでも「ハーグ条約」に関するテーマで論じられていたのにはビックリ!
少しずつですが、「離婚や別居で子供と会えなくなってしまったり、片親の意向だけで親子の絆が断たれてしまう現実がある」ということが広く認知されるようになってきています。

が、気になる現実もちらほら…
とある専門家のシンポジウムで、親子の面会交流に関して、次のような意見が出されたとか。


「虐待している親やDV親はとても子どもに会いたがる」、
「引き離された親の心情としては、欲求充足のための子どもとの面会ではないかと『思える』」、
「よりを戻すために子どもに会いたがっていると『思う』」

確かにDVや深刻な虐待などが絡む、大変難しいケースもあるようです。
が、この発言に照らし合わせると、「夫側からのDVにより、力づくで子供と引き離された女性側」にも同じような見解がされることになります。
もしそうだとすれば、女性当事者のほとんどが「虐待やDVの加害者」となり得るのでしょうか?
ただでさえ「子供を引き取れない母親なんて、余程悪い母親に違いない」という偏見の目で見られがちなのに…。
これはとても悲しいことです。
「子供を連れているかそうでないか」だけで、なぜこうも扱いが違ってくるのでしょう?

そもそも、「子供との面会が出来なくなった男性側」も、皆が皆本当に「DV加害者」だったのでしょうか?
そのあたりの疑問も感じます。


さてさて。
話は変わりますが、「子供と離れて暮らす母親のつどい」の有志で、「女性当事者の経験談集&アンケート募集」を企画しています。
「親子引き離し問題」の実態を明らかにし、世間に問題提起し、離別後の親子の幸せのありかたを考えるためのきっかけにしたいと考えています。
詳細が決定しましたら、こちらでご案内しますね。


それから、国際離婚に絡んだ当事者の方に向けて、外務省でもアンケートを実施しています。
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)」に関するアンケート
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/event/ko_haag.html当事者の皆様、ご協力をお願いいたします。


もうひとつ。
ツイッターでもつぶやいています。
https://twitter.com/Lonelymothers

2010年5月 1日 (土)

「大使への手紙」 ハーグ条約批准に関して

ハーグ条約についての話題は以前にも取り上げたことがありました。

日本国内では、離婚後は単独親権制度となるため、別居中からも既に片親と子供の引き離しが習慣的にされている現状があります。
両親の離婚を機に、親子の交流が断たれてしまう例も多く、後を絶たない幼児・児童虐待事件の一因になっているとも考えられています。
何よりも、両親の離婚で深く傷つくのは、子供達なのです。成人してからも、何らかの心の傷に苦しむこともあると聞きます。
国際結婚の夫婦の場合、国の法律の違いから、片親による子供の連れ去りは大きな問題となります。それは日本が「ハーグ条約」への批准をしていないからだとか…。

私の乏しい知識では、これ以上の言葉で説明はできません。(丸投げモード。)
なので、ハーグ条約についてのブログ記事を紹介させていただきます。
まるで私達親子引き離し当事者の願いをこめて下さったような、わかりやすい記事です。

「大使への手紙」 堀尾の保健学ブログより
http://blogs.yahoo.co.jp/horio_blog/50166014.html

私が特に注目したのは、ここです。

ほとんどの日本人が知らないのは、次のようなことです。
・親が離婚した子どもは、大きな精神的な衝撃を受けること。
・離婚後に親が争いをすると、子どもはとても悲しくなること。
・親は自分の感情だけで手一杯で、子どもの感情にまで気が回らないこと。
・欧米の家族法は、離婚に際して親子関係を存続させることを主な目的にしていること。
 (日本の民法は、離婚に際して片親の親権を剥奪する)。
・離婚すると、平均的な収入は、父母、共に低下する。
・離婚すると、平均的な寿命は、父母、共に短くなる。(Linda Waiteによる)。
・アメリカでは、離婚後の面会について、大学の公開講座などが情報提供を行っている。
・アメリカでは、夫婦がうまくやっていくために必要となる技術について、公的機関が情報提供している。
 (Healthy Marriage Initiative)、(The National Healthy Marriage Resource Center)

ホントそうですよね。
「法は最小限の倫理」という言葉もあります。だとしたら、「親子の絆を無意味に断ち切る」というような法は存在してはならないと思います。

ツイッターでつぶやきはじめました。
https://twitter.com/Lonelymothers

2010年3月25日 (木)

ハーグ子奪取条約について アメリカ大使館HPより

最近、マスコミでも「ハーグ条約」や「共同親権」が取り上げられることが増えてきました。
ハーグ条約に加盟していない日本は、国境を越えた「親子引き離し」に対応する術がないと言われます。
外国人の夫に子供を国外へ連れ去られてしまったお母さん、日本人の妻に子供を日本に連れ帰られ、会えなくなってしまった外国人のお父さん。
国や性別など、色々な事例を聞いています。
日本人同士でも理不尽な親子引き離しは悲劇なのに、距離も遠く、言葉の面でも心配な国際離婚の場合は、引き離された親子の悲しみは、ますます計り知れないことでしょう。

ちなみにカナダでは、片親で国際線に乗るときは、配偶者のサインが必要なのだとか。
移民が多い国では、この手の問題の対策もきちんとされているのですね。

そうはいっても、国際離婚をするわけではない多くの人には、「ハーグ条約に加盟していないとどうなるか」がいまいちピンとこないかもしれません。
アメリカ大使館HPでは、次のように紹介されています。
…私も少し理解できたつもりです。


 

まずはじめに、次のような架空の事例を想像してみよう。

 米国人女性・ミッシェルと日本人男性・カズオは、7年前に結婚して以来、米国ニューヨーク市で一緒に暮らしてきたが、1年前に離婚し、ニューヨーク市内でそれぞれ別の場所に住むことになった。2人の間には、ジョーという名の現在4歳の男の子が1人いる。2人の離婚に際して、ジョーは、母親ミッシェルと暮らすが、隔週の週末は父親カズオの家で過ごすこととなった。カズオは、仕事の関係で日本に帰国することになり、半年前のある週末に、自分の家に来ていたジョーを、ミシェルには相談せずに、日本に連れ帰った。その後、カズオは、日本にある実家(自分の父母の家)でジョーを育てている。母親ミッシェルは、どのようにしたらジョーを米国に取り戻すことができるだろうか。

 この事例で生じたような事象は、通常「子の奪取」と呼ばれる。「子の奪取」とは、関係が破綻した男女の間に未成熟子(16歳程度までの子)がいるときに、一方の親やその親族などが、もう一方の親など監護権を有する者と暮らしている子を、実力で(つまり双方の合意や法的な手続によらずに)自分の手元に奪い去ることをいう。子の奪取は、たとえばともに日本に住む元夫婦間で子を奪い合うときのように、国内的な事件としても頻繁に生じるが、上記の事例のように国境を越える国際事件として発生することもある。そして、20世紀後半には、社会や家族の国際化とともに、このような国際事件としての子の奪取が、重要な社会問題として注目を集めるようになってきた。

 そこで、このような国際的な子の奪取に対応するために、1980年にハーグ国際私法会議という国際機関において、ある条約が制定された。これが、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(Convention sur les aspects civils de l’enlèvement international d’enfants; Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)」である。この条約は、1983年に発効し、その後も順調に締約国が増加して、2009年8月26日現在で81カ国が締約国となっている。米国についてこの条約が発効したのは1988年であるが、日本はまだ締約国になっていない。なお、締約国のリストは、ハーグ国際私法会議のウェブサイトに示されており、またこの条約に関する詳しい情報(条文、解説、文献等)も同ウェブサイトで見ることができる。

 さて、この条約がどのようなものであるかを、上記の事例に即して概観してみよう。

 まず、現在の状態、つまり米国が締約国であり、日本が締約国ではない状態ではどのようになるだろうか。現在、日本は締約国ではないので、日本と米国の間ではこの条約は適用されない。したがって、後述するような、条約を活用した解決を図ることはできない。そこで、母親ミッシェルの取りうる手段は、自ら父親カズオと話し合ってジョーを返還するよう求めるほかは、日本の裁判所において、日本の法制度に基づいて返還を求めることだけである。ところで、日本の裁判所にジョーの返還を求める申し立てをするには、日本の弁護士に依頼する必要がある。弁護士を使わずに申し立てることも制度上は可能であるが、日本語を解さず、日本の法制度を知らないミッシェルが、日本の弁護士を雇わずに裁判所を利用することは実際には不可能であろう。ミッシェルが日本で弁護士を探してこの事件を依頼するには、かなりの手間と費用を要することになる。さて、首尾よく日本の弁護士に依頼して、裁判所への申し立てをすることができたとしても、結果としてジョーの返還が認められるかどうかは、わからない。日本法上、両親間の子の奪取の事案において返還を認めるか否かを決する法制度は複雑なので、ここではその詳細の説明は省略するが、日本の裁判所は、この事案のあらゆる事情を考慮したうえで、「子の最善利益(best interest of child)」を図るには返還を命ずるべきか否かを判断することになる。そして、その「この事案のあらゆる事情」として判断の基礎になる事情のなかには、ジョーにとって、日本で父親カズオ(とカズオの父母)のもとで育てられるのと、米国で母親ミッシェルのもとで育てられるのと、いずれがより適切であるかについての判断も含まれる。したがって、裁判官が、いまジョーを米国のミッシェルのもとに返すよりも、このまま日本のカズオのもとで育てられるほうがよいと判断すれば、ミッシェルの申し立ては認められないことになる。

 では、もし仮に日本も子奪取条約に加入しているとしたら、どうなるだろうか。その場合には、日米ともに締約国であるから、この事例にハーグ子奪取条約が適用されることになる。そうすると、この事例の処理は、上記のものとは大きく異なることになる。

 条約が適用される場合の処理の流れは、おおむね次のようになる。ミッシェルは米国の「中央当局」(国務省の担当窓口)に相談して申し立てをする。すると、米国の中央当局から連絡を受けた日本の中央当局が、条約の仕組みに従ってジョーを米国に迅速に返還するために、強力な援助を提供してくれることになる。すなわち、日本の中央当局は、必要に応じてジョーとカズオを探し出して、カズオに任意の返還を促し、もしカズオがそれに応じない場合には、日本の裁判所に返還命令を求める裁判を自ら提起し、またはミッシェルがその裁判を提起するためのさまざまな援助を提供する。そして、その裁判において、日本の裁判官は、「ジョーにとって日本で父親カズオに育てられるのと米国で母親ミッシェルに育てられるのと、いずれがより適切であるか」についての判断は一切しないで、原則として、ジョーを直ちに米国に返還することを命ずることになる。以上のような条約適用の流れについて、もう少し補足して説明をしておこう。

 まず、この条約の運用に当たって重要な役割を果たす「中央当局」についてである。条約の締約国は、自国の中央当局を定めることになっている。米国の中央当局は、国務省の一部局(Department of State - Office of Children’s Issues)である。各国の中央当局は、他国の中央当局との間で互いに緊密に連絡を取り協力するとともに、自国の他の諸機関とも協力して、この条約の目的を実現するために力を尽くす。具体的には、子を奪取された親(申立人)からの申し立てを受け付けて、子の所在する国の中央当局にその申し立てを伝える(条約8条、9条)。そして子の所在する国の中央当局は、子の迅速な返還を確保するために必要なさまざまな措置を取る(条約7条)。中央当局の働きと援助のおかげで、そうでなければ、外国に連れて行かれた子を取り戻すための数々の困難を前にして途方に暮れるはずの申立人(条約が適用されない場合のミッシェルの気持ちを想像してみてください)は、子を返還してもらうための手続きを実際に利用することができるようになるのである。

 次に、どちらの親が育てる方が子にとっていいのかを判断せずに子の返還を命ずることについて。子奪取条約の最も重要なポイントのひとつは、どちらの親に子を育てさせるべきかという判断(すなわち監護権に関する判断)をせずに、実力による奪取があった場合には原則として必ずもとの国に子を戻させるという点にある。もし、奪取された子の返還を求める裁判等において、監護権に関する争いをも含めて判断をしようとすると、将来にわたる子の利益等も考慮しつつ詳しく調べる必要があり、迅速な手続は困難になる。また、場合によっては、奪取してきた者に監護権を与えるべきだという判断がなされて(事例でいうと、カズオが日本で育てる方がジョーにとってより幸福であるという判断がされたような場合)、結局、奪取された子をそのままにするという結論が出ることもありうる。しかし、それでは、条約の目的のひとつである、子の奪取を抑止する効果は、期待できない。そこで、この条約に基づく返還プロセスにおいては、監護権に関する判断はせずに(つまりどちらの親に育てさせるのが子にとって長期的にいいのかということ等は考えずに)、実力による奪取がなされた場合には、そのことだけをもって、もとの国(子の常居所地)に返させることを定めている。条約は、そのように子をもとの国に戻したうえで、監護権に関する判断は、もとの国の裁判所がじっくり調査して判断すればよいし、そうすべきであると考えているのである。以上の点は、条約の16条、17条、19条等に具体的に規定されている。たとえば、17条は、「申し立てを受ける国において監護に関する決定がなされていること」が、この条約に基づく子の返還を拒否する理由にはならない旨を定めている。したがって、父親カズオが米国からジョーを無断で連れて日本に帰ってきた場合に母親ミッシェルが日本の裁判所に条約に基づく返還を申し立てたときには、条約に基づく返還申し立ての要件が満たされていれば、たとえ日本の裁判所がジョーの監護権をカズオに与える旨の裁判をしていたとしても、日本の裁判所はそのことを理由にして返還を拒否することはできないのである。ただし、日本の裁判所は、ジョーを米国に返還するか否かの決定に際し、それまでになされた監護に関する決定の理由を考慮に入れることはできる。

 この条約が、このように、国境を越えた子の奪取があったときには、迅速かつ網羅的、確実にその子をもとの国に戻すことを大原則とするのは、たとえ実力で子を奪取して連れてきても無駄であって、かならずもとの国に戻されるということにしておけば、そのこと自体が奪取に対する抑止力として働くであろうという考え方に基づくものである。そして、奪取が生じること自体が子の福祉に対する重大な侵害であることを考えれば、奪取の抑止は、国際社会の目指すべき非常に大切な目標となるのである。

 もっとも、この原則には、若干の例外が定められている。まず、奪取から1年を経過してから申し立てがなされた場合であって、「子が新しい環境になじんでいること」が証明された場合には、申し立てを受けた国は子の返還を命じる義務を負わない(12条2項)。逆に言えば、奪取から1年以内に申し立てがなされれば、子が新しい環境になじんでいても返還しなければならないのである。また、条約13条にも、申し立てを受けた国が返還を命じなくてよい例外的な場合が列挙されているが、このうち実際によく問題になるのが、13条1項b号の定める例外である。すなわち、同号によれば、「子の返還が子の身体もしくは精神に危害を加え、またはその他許し難い状況に子をおく重大な危険がある」ことが証明されると、返還義務はない。たとえば、返還先で子が虐待を受ける恐れがあるような場合がこれに当たる。ただし、この例外規定は狭く解釈されており、返還先の国が子を虐待から守ることができる場合には適用されない。

 さて、以上に概観したように、子奪取条約が適用される場合と適用されない場合とでは、奪取された親や子の救済が大きく異なる。冒頭に述べたように、すでに81カ国という多数の国がこの条約の締約国になっていることもあり、最近では、日本がこの条約にまだ入っていないのはなぜか、また日本は近い将来この条約に入ることができるのか、入るべきなのか等について、さまざまな議論がなされてきている。

 離婚や子育てに関する日本の文化・伝統が、この条約への加入を妨げているのではないかという見方も一部にはあるようである。確かに、日本では、離婚後は一方の親のみが子の親権をもつことになっていて、欧米のような離婚後の共同親権はとられていないし、また、いわゆる面接交渉権も欧米と比較するとやや弱いものになっている。さらに、親が相手方から子を奪ってくることについて、これを子への愛情の発露と考え、国家がこれを強く非難することを疑問視する見方もないではない。しかし、離婚後も、両親がそれぞれの仕方で子育てに関与し、また監護している親以外の親も面接交渉等を通じて子と交流を持つことが、子の健全な発達のためには望ましいという考え方は、近年では日本でも広く共有されてきている。また、親が実力で子を奪取することに対する否定的な評価も高まってきているように思われる(そのような親に刑事罰を課することが最近では実際に行われるようになってきている)。したがって、仮にこのような文化・伝統がこれまで条約への加入の妨げになってきたとしても、今後はそれほど大きな障害にはならないように思われる。

 しかし、だからといって、この条約に加入するのが日本にとってごく簡単なことであるというわけではもちろんない。条約に加入するためには、さまざまな点に関して、周到な準備が必要となる。たとえば、中央当局がその任務を果たせるように、人的・財政的な資源を十分に確保する必要がある。また、子の返還を命ずる裁判についても、現存する法的手続きでは不十分であるため、新しい特別な手続きを立法する必要がある。さらに、子を奪取した親が子の返還命令に従わない場合に、その命令を強制的に実現する方法も検討しておく必要がある。また、国内事件として発生する子奪取紛争の解決方法と、条約が適用される国際事件としての子奪取紛争の解決方法との、整合性・バランスも考える必要があろう。

 このように、加入のために検討すべき課題は少なくないが、この子奪取条約に加入することによって実現される利益は決して少なくない。条約加入によって、日本への子奪取だけではなく、日本から(他の締約国への)子奪取も抑止されて、子の福祉は全体として大きく改善されることになる。また、現在は、面接交渉等のために日本に子を一時的に旅行させることを認めると、もし約束に反してそのまま子が日本に留めおかれたときに効果的な返還実現手段がないために、たとえば米国の裁判所は子の日本への旅行を認めない傾向にあるといわれているが、日本が条約に加入すればその点は現在よりも認められやすくなるはずである。日本にとってこれらの利点があるというだけではなく、国際的な協調に基づいて世界の子供たち全体の福祉向上に貢献できるという観点からも、この条約への加入は真剣な検討に値するものといえるのではなかろうか。


早川眞一郎

東京大学教授(大学院総合文化研究科・国際社会科学専攻)。東京大学法学部卒業(1978年)。東京大学法学部助手、弁護士(長島大野法律事務所)、関西大学助教授、名古屋大学助教授、東北大学教授を経て、2005年から現職。ハーグ国際私法会議の扶養条約プロジェクトに日本代表として参加。著作に「フランスにおける外国法の適用」名古屋大学法政論集159~162号(1995-96年)など。


http://app.f.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?blog_id=1097365

2010年3月11日 (木)

イベント情報「ガーディアン第二回講演会のお知らせ」

香川で活動されている団体さんのイベント案内です。
千葉法相が共同親権化への前向きな検討を表明されていることで、離婚後の親子に関する問題に注目が集まっている今、まさにタイムリーなイベントと言えそうですね。

一般社団法人 親子の絆ガーディアン

※当団体は2月25日をもって一般社団法人へと移行しました

第二回講演会 DV防止法と共同親権


 現在、日本はアメリカを始めとする諸外国から国際結婚の破綻後、日本人が子どもを連れ去って会わせないことにより拉致大国と呼ばれ、ハーグ条約(国際的な子の奪取に関する民事面のハーグ条約)の批准を迫られています。
 これに対し外務省はDV(ドメスティックバイオレンス)=配偶者間暴力の可能性を楯に条約の批准に慎重な姿勢を見せています。
 又、日本と外国とでは離婚後の親権制度に大きな違いがあり、そのことも条約の批准を難しくしています。問題を解決するためには、まず日本の親権制度を改め、離婚後も共同親権とすることが必要ですが、国内法の改正に対しても同じようにDVがあり得るから離婚後共同親権はだめだという意見があります。
果たして本当にそうでしょうか?
ではDV防止法と共同親権制度は対立するのでしょうか?
離婚後共同親権制度とは? DVとは? DV防止法とは?   家族再統合とは?
これでいいのか日本の親権法!?
これでいいのか日本のDV防止法!?
今回は講師にメンズDV立ち直り支援、面会交流サポートなどに尽力しておられる、日本家族再生センター味沢道明氏を迎えて、外国の法律や実情と比較しながらDVとは何か、共同親権との関係は、そして現在の日本のDV支援を取り巻く問題点などを解説して戴きます。ふるって、ご参加ください。

講師:日本家族再生センター所長 味沢道明
日時:平成22年3月27日(土)13:30~16:30
場所:高松市錦町一丁目20番11号
高松市男女共同参画センター 第8会議室
TEL(087)821-2611 FAX(087)821-2661
入場料:\800
お問い合わせはこちらまで
社団法人 親子の絆ガーディアン事務局 087-874-6984
代表理事 早井 090-4507-4224

離婚したら1人親が当たり前ですか?
離婚後、片方は親じゃなくなってしまうこの国の現実はおかしいと思いませんか?

離婚しても親は二人ですよね?

事実婚だってシングルマザーだって
こどもの親は二人ですよね?   

それでも1人親家庭と呼びますか?

第二回講演会『DV防止法と共同親権』

講師 日本家族再生センター所長 味沢道明氏

講師略歴 京都市在住。趣味は映画観賞、料理。自
然派料理教室のかたわら日本の男性運動
をリード。加害、被害、性別、年齢に関
係なく渦中の当事者のための様々な援助
を提供する日本家族再生センターを設立。
メンズサポート共同代表も兼任。


離婚は親子の生き別れですか?!
そんな先進国は日本だけ!!日本は
本当に先進国?!離婚したって共同で、あるいはそれぞれに子育てし、両方の親と子どもの絆を大切にする。それが世界の現実です!!

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